道迷い事例(2023年発生)の検証 3 広島市西区己斐(こい)にある茶臼山
今回は、シンプルかつ基本的な道迷いを検証します。
参考:豊川山岳会道迷い事例https://toyokawa-ac.jp/
国土地理院地図https://maps.gsi.go.jp/
茶臼山というと、己斐峠の北にある大茶臼山が有名ですが、今回のはその南にある標高199メートルの山です。
概要
広島市西区、山陽新幹線のトンネルの真上です。
主なピーク(緑色)は、上記の通り。
尾根図
己斐大迫の住宅街は、この茶臼山付近の200メートル級の山を越えた、山地の上にあります。
この地域の断面図を見ると、西に高く、東に低くなっています。
谷も追加で表すと
谷の切れ味が鋭いというか、かなり深いところまで食い込んでいます。
これは中国山地の特徴で、つまり風化が進んでいて削られやすいからです。
豪雨で土砂崩れや土石流が頻発する原因となっている、土質です。
今回の道迷い
道迷いの概況
Eに車を停めて、Aの茶臼山に行き帰りしたときの帰り(北行き)に、途中のDで間違って南東に進んでしまいました。
ちなみにAからEまでは、700メートルの距離です。
これは道迷いの典型例
「なぜこんな簡単な道を間違えるんだ?」と思うかもしれませんが、この道迷いには、道迷いの2大原因がどちらも含まれています。
道迷いの基本的なケースだと思います。
道迷いの2大原因とは
1:人は、尾根に誘引される(尾根が道に見える)
2:人は、今まで目指して歩いてきた方向に直進する(惰性歩行)
です。
このDから南東方向には、尾根が伸びています。
そしてこの付近の道は、Bから北に歩いてCへ、Cから東南東に歩いてDへ、Dから北東に歩いてEへ、です。
CからDに向けて歩く際、東南東に進んでいる癖が身に付きます。そして目の前に、南東に進む道と、北東に進む道の分岐が現れると、東南東により近い(まっすぐ行く意識が強いので、直進に近い)南東方向の道を選択してしまうのです。
あらかじめ地図で方向を見定めていたと思うので、「この道をまっすぐ行き帰り進めば目的地だ」という意識が強くなったのでしょう。
なお地図のBから南東の尾根に誘引される人がいるというデータが、あります。
人は物が視界に入っても気づかないことがある
「西に住宅地があるからそれを目印にすればいいのではないか?」と考える人もいると思いますが、人の意識はそう単純ではありません。
人は、自分の見たい物しか見ません。
極端な話、道で知人とすれ違ってるのに声を掛けられるまで全く気づかないということは、よくあります。
ましてや前に書きましたが、どこが谷で、どこが斜面かという地形意識に乏しい人が、少なからずいます。
道も同じで、分岐があるのに見えない、気づかないという人が、います。
こういう意識不足は、心がけで防ぐことができます。
今回の迷った人は、恐らく住宅地が目に入っていても意識の外だったと思います。
見えているのは、山だけだったのでしょう。
私事ですが、最近自転車(電動でなく自力で動かすもの)に乗り始めました。
すると道の微妙な高低差に初めて気づいたのです。歩いているときは、平地だと思っていました。
今まで住んでいた平坦な(と思っていた)町が、起伏に富む町だったと初めて知りました。
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