東京都の山々 あきる野市の山々3 金比羅山と金比羅尾根
前回からだいぶ時間が空きましたが、今回はあきる野市の西部にある金比羅山(標高468メートル)を紹介します。
はじめに
前回までの投稿は、登山道の紹介のみにこだわっていました。
このブログの目的は、道迷いを防ぐとともに、山の姿かたちを明らかにしていくものです。
もちろん、山の姿かたちは人の存在あってのものであり、人が居なければ登らなければ山は単なる地面の盛り上がりでしかありません。
そこで今回以降は、登山道を紹介はしますが、その道・ルートから見えてくるその山の姿かたちを、山への畏敬を込めて明らかにするような内容で行こうと思います。
地図は、国土地理院のweb地図に作画して引用しました。(以下の引用も同様)
金比羅あるいは金毘羅という名前の神社は全国各地にあり、香川県にある有名な神社と関りがあるか、それにあやかったものです。
付近は、山岳信仰の対象とされ、古くからの霊場といわれます。
登山道
1 五日市駅からのルート(東尾根からのルートその1)
南東方向のJR五日市線の終点・武蔵五日市駅から登るのが、一般的なルートでしょう。
駅から登山口までは1.5キロメートルあります。
登山口は、地図の右下、寺マーク(薬師堂)の付近です。
屋根に特徴のある薬師堂が見える辺りから、右に登って少し行ったところがそうです。
分岐は、東京都作製の標識が立っているので分かりやすくなっています。少し行き、左の民家に行く道と分岐して、右に登ります。
地図内の緑色のマーカーが、分岐点です。
それぞれに東京都が立ててくれた標識が付いていますが、もし標識がなかったらルートがヘアピンターン状態なのでかなり難しい分岐だったでしょう。
標識があるからこそ、気軽なハイキングコースになっています。
このルートから見える山の姿かたち
登山口への分岐をAとしました。その先の一般民家との分岐を右に分かれて登る口に、登山口があります。
この道に沿って、私が赤い色で点線を書いています。
実は、これは道に沿って書いたのではなく、等高線を見て尾根線を書いたつもりが偶然道と重なっただけです。
つまり、このAからBへ至る道は、尾根を利用した道です。
この凡例では、尾根は、赤い実線または赤い点線で示しています。
実線は、明瞭な尾根。
点線は、不明瞭な尾根です。
AからBに至る道は、尾根ですが、等高線同士の間がかなり空いていて不明瞭です。歩いていても、どこが尾根か分からないでしょう。
ただ左(西)に谷があり、右(東)にも谷があることから、そこが尾根だと分かります。
Bの地点は、東から登ってくる尾根との合流地点。この東からの尾根の上に道があり、金比羅山への道と合流します。
しかしこの東からの尾根は、ここで終了。
Cは、標識がなければ難しい分岐点です。
登山道はここからヘアピンターンで、西に向かいます。
BからCへの道が、等高線に沿った比較的平坦なルートであることから、惰性に任せてCを突き抜けて北西方向へ行ってしまう危険があります。
このCは、東から来て西へ行く太い尾根に乗っかる地点で、そういう知識があれば標識がなくても迷いません。
Dの分岐は、それほど難しくありません。登ってきた道の惰性で、そのまま進めば正解ですから。
DからEへの道は、最初部分の斜度がきついですが、後はほぼ平坦です。
E・Fが、ヘアピンターンですね。
Eからは西に直進しても、行けないことはないです。南の谷の斜面がかなり大きいので、南に寄り過ぎると危険です。
F・Gは、山頂に直接つながる尾根上にある登山道に至る分岐点です。
Hのマーカーは、誤植です。
以上から、金比羅山の東ろくには複数の尾根があることが分かります。
2 南尾根からのルート
A(小中野)から登り、B・Cへと至る道です。
Aに2か所の緑のマーカーがあります。これが、登山口です。
ルートから見える山の姿かたち
AからBまでの道に沿うように、赤い点線、赤い実線を記しています。
赤線は、尾根を表しています。
この道は、尾根を利用した道です。
ただ等高線が非常に密です。つまり傾斜が急で、登るのにかなりの体力が必要です。
ここを登る人たちも少なくないですが、体力を考えて選択したほうがよさそうです。
Bは、登山道としては分岐点がないのですが、自然の地形としてはここで東に分岐する尾根があります。
この東に延びているのは、この南から山頂に至る尾根の支尾根です。
この支尾根は、東ろくから登る人が一定数いて、このBがその分岐点になっています。
登りでは間違えませんが、下りのさい他人についていく癖のある人は注意が必要です。
ちなみに、この東に延びる支尾根も、その先でさらに細かい複数の尾根に分かれています。
下りで利用するときは、慎重に選択しましょう。どれを選んでも下山はできますが、行く予定ではないところに下りてしまい時間をロスします。
Cの琴平神社付近に、3方向から尾根が集まっています。
ただ南ルート以外の尾根は、使われていない模様です。
3 西尾根からのルート
ピーク図
この地図は、金比羅山の西・北にあるピークを示したものです。
ピークとは、山頂のことです。地図では、等高線で囲まれているところを表しています。
登山やハイキングに行くとき、行く先の山々の地図で調べ、このように作図することもいいでしょう。
ただ作図すると言っても、等高線がいっぱいあってどこから手を付けていのか、戸惑うと思います。
そこでまず、小さな山頂群を緑色のマーカーで地図のように作図します。
尾根線や谷沢線を書き込まなくても、これだけでもかなりの情報を得ることができます。
この地図を見ると、金比羅山は、その西に点在する小さな山頂群(稜線)の一つであることが分かります。
この山頂群をめぐる道を、縦走路と呼びます。
金比羅山から北西に伸びる稜線の東西に、それぞれ、養沢・深沢という2つの谷沢があるのが見えます。
谷と谷の間にあるのは、尾根です。巨大な尾根と言っていいでしょう。
その深沢の北に、もう1つ稜線があります。
じつは、この稜線と金比羅山稜線とは、地図の北西隅でつながっています。
金比羅山が南の稜線の終端にあることから、北の稜線から縦走する終着点、あるいは北の稜線へと縦走する出発点として、使われることが多いです。
尾根図
金比羅山の西・北西に伸びる尾根線を描いています。
谷沢線を青で描くと完成なのですが、尾根線の赤だけでも情報としては十分です。
緑色のピークをつなぐように、尾根が連なっています。
支尾根の一番先が、谷であることに注目してください。
尾根は登山道としてよく使われますが、これを使って下るときは先端まで行ってしまうと谷沢にすとんと絶壁で落ちることがよくあります。
尾根を下るときは、ふもと近くに達すればなるべく早く隣りの谷沢に降りるようにしてください。普通の登山道は、そのように作られています。
A(金比羅山)からC・Dへの詳細図
それでは、西尾根ルートを丁寧に見ていきます。
まず、Aの金比羅山の山頂の分岐です。
いろいろな分岐点がある中で、最も重要で注意するべきなのが、この山頂分岐です。
他の山々では山頂で降りる方角を間違えることによる遭難が、続出しています。
Aの分岐は、一般的な登山ルートである、南から来る道(五日市駅から登り琴平神社経由の道)と、西から来る道(ここで説明している道)。
それに加え、北の尾根への分岐、東の尾根への分岐と、合計4つの方角への分岐があります。
どの道を選択して降りるか。
もちろん個々の行動目的地に応じて、異なります。
選択は、コンパスを用いて行ってください。スマホでもコンパスアプリをダウンロードできます。
C・Dは、林道の分岐です。
林道は、林業用なので車が通れる程度に整備されています。
林道を歩く人も多いですが、その行き先に注意しましょう。
Cの手前にB地点が、あります。
ここから谷が分岐しています。緩やかな傾斜で広い谷なので、ここを登り降りしている人もいます。
AからGへの全体図
CからEへは、尾根(稜線)に沿った登山道です。この尾根の最高点は、幅が広くて平坦。
EからGへの詳細図
E・Fは、他の登山道との分岐点です。
Eは、北東へ伸びる登山道との分岐点。
Fは、ここから西に降りる登山道と、北に伸びる登山道(縦走路)、東に向かう登山道の3つの方角の分岐点。
分岐点で最も多い形は、上記のような3つの方角に道が分かれていくものです。
こういうところでは、風景をパノラマ的に見回した後、油断すると自分がどの道から来たのか分からなくなります。
FからGへは、西に尾根を下る道です。
ただ、よく見てください。尾根は赤い線で記していますが、黒い登山道はなぜかその尾根を避けているように進んでいます。これは、なぜだと思いますか。
等高線同士の間隔が非常に密なところから、かなりの急傾斜が読み取れます。
さらに不明瞭な尾根なら赤い点線で記していますが、ここは赤い実線の明瞭な尾根です。尾根の高い部分が細いいわゆるやせ尾根といわれる状態に近いことが考えられます。
そういう尾根を歩くのは、とても危険です。
登山道が尾根を避けつづら折りになっているのは、そういう事情が隠れているからです。
Gの近くだと尾根の幅が広がり安全になっているので、登山道が尾根に沿った状態になっています。
Gは、4つの方角への分岐点です。
4 金比羅山方面から北西へ白岩山まで伸びる縦走路(金比羅尾根)
尾根・谷沢図
この稜線から、たくさんの支尾根が分岐しています。
尾根があれば、谷があります。
分岐点が非常に多いルートです。
分岐点図
英大文字だけで20あり、字が足らず小文字3つも使いました。
23か所の分岐があります。
小文字のcは、白岩山です。また別の機会に解説します。
拡大図その1
H・I・Jは、尾根そのものでなく、尾根の西に沿った形で伸びています。
これが影響しているのか、H地点で尾根の上を歩くルートを選択してしまう人もいます。もちろん安全であれば、選択してもかまわないでしょう。
I地点は、西の本須から登ってくる道との合流地点です。
J地点は、西へ行く谷と行き会う場所で、谷に興味のある人がつい足を向けてしまうかもしれません。
ここの谷はかなり険しいので、先に進むと危険です。
k地点も、同じく谷と行き会う場所です。
L地点は、東の深沢から登ってくる道との合流地点です。
I・L共に、分岐する道がどこにつながっているかを知っていれば、選択に迷うことはありません。
拡大図その2
М・N共に、東の深沢の奥のほうから登ってくる道との合流地点です。
О地点は、北東の谷と行きあう場所です。この谷も、かなり険しい状況です。
拡大図その3
P地点は、北に降りていく谷と行きあう地点です。この谷も、険しいです。
Qから先は、やはり尾根の頂上を避けて登山道は尾根の東側を通っています。
この尾根は等高線だけで見ると、ゆったりしています。
しかし現地独特の歩けない事情がある可能性があり、だから登山道が尾根を避けていると想像できます。
もちろんこの尾根(標高576メートルのピーク)に登っても、それはそれでいいです。要は、選択を間違えて行ってはいけないということです。
拡大図その4
R地点は、東の谷と行きあう場所です。
なお西にも、谷っぽい地形があり、こちらに足を踏み入れかけている人もいます。
S・T・Uの3地点も、それぞれ、東に伸びる谷、南南西に伸びる谷、南南西に伸びる尾根と行きあう場所です。
尾根や谷は、人を誘引します。誘われて、ふらふらと足を踏み入れることのないように。
拡大図その5
V地点は、東の道を選べば北へ向かう登山道、西の道を選べばこの先のピークを通って西にターンする登山道へと進みます。
もちろん、このピークを通過して西に行かずそのまま北に向かってもかまいません。
ただこのピークから北に降りる道が、なぜ地図では登山道になっていないかを考える必要があります。
Wは、東に伸びる谷と行きあう場所。
Xも、北東に伸びる谷と行きあう場所です。
Y地点は、南にあるピークの東を通る道と、そのピークの西を通す道との分岐点です。
また、そのピークから降りてくるあるいは登っていく道とも、合流します。
拡大図その6
Z地点は、3つの方角に伸びる尾根が集まっている場所で、南北に伸びる登山道を選択せずに、尾根を選ぶ人もいるようです。
選んでも、その先に道はありません。開拓するつもりなら、それはそれでいいわけですが。
aは、記すところを間違えました。
ここのピーク(緑色)ではなく、そのすぐ北のコル(ピークとピークの間)付近に記すべきでした。
ここは、東西に谷が伸びていて、人を誘引しています。
b地点は、東西に伸びる登山道(東に伸びる尾根はロンデン尾根とも呼ばれている)との合流場所です。
西ないし北西に行けば、麻生山・日の出山があります。
東ないし南東に行けば、白岩山・梵天山・深沢山・勝峰山があります。
分岐の標識があるみたいですが、金比羅山からロンデン尾根に行くには、この地図情報だけだといったん西に行き、そこから東にヘアピンターンで戻るような複雑な分岐になっています。
金比羅尾根アップダウン図
最後に、この金比羅山から白岩山へのいわゆる金比羅尾根ルートの、アップダウン状況を見ましょう。
みごとに、緑色のなだらかな道が続いています。
急登を表すピンク色は、少しあります。
登山道というよりは、ハイキング道ですね。
尾根や谷に変に興味を持たない(道迷いをすると途端に興味を持つようになります)なら、迷うことなく楽しく歩けます。
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