山道の姿かたちを知る1 熊倉山~土俵岳

今回は、山の姿かたちではなく、登山者が歩いていく山道の姿かたちを国土地理院の地形図で観察し、作図を加えて検証していきたいと思います。
https://maps.gsi.go.jp/development/ichiran.html

今までのブログ回でも、登山ルートを地形図で調べ、迷いやすい箇所の指摘は続けてきました。今回は、そのルートに特化してみたいと思います。

今回取り上げる山道は、東京都と山梨県の県境にある、稜線の道です。

















県境には、こういう山々のはっきりとした連なりが使われることが多いです。
はっきりとしているといっても、それはこのように地図に色を付けて作図しているからであって、リアルの場所では必ずしも明瞭とは限りません。








(きれいな稜線の例)




ルート上の迷いやすい箇所に、赤いマーカーを付けています。
非常にたくさんあることが分かるでしょう。
これ以外にも、地形図に現れない、隠れた小さな分岐が多数あります。

拡大図その1






















登山者が誘い込まれやすい道には、尾根道と谷道があります。

「下山するには、谷に降りればよい」というような言葉を聞きますが、それはふもと付近の話です。
こういう稜線に近い場所で谷に降りるのは、途中に滝があることが多く、非常に危険です。

「下山するのに、尾根が最適」というのも、一概に正しいとはいえません。
踏み跡が多数ある尾根ならまあまあ安全かもしれませんが、踏み跡がほとんどない尾根だとそもそも立ち入ってはいけないことを示唆していると思います。
危険を覚悟して未踏の道を開拓するというのなら、行ってもいいです。

「?」マークがついている北のほうの谷が、あります。
人が立ち入った情報のある場所です。
しかし何度も言っていますが、どういう気持ちで立ち入ったのかが不明です。迷った結果なら、最悪でしょう。

同じく「?」がついている南に行く尾根がありますが、このルートは熊倉山の回で書いた通り動画にも上がっているルートです。
このように、人が立ち入ったという情報を入手しても、その他の様々なソースから情報を入手するように努め安全性を見極めることが必要です。

拡大図その2























最近発表された某登山アプリの便利な機能の運用方法からも分かることですが、分岐点の上に立って方向を見定めるのではなくて、分岐点の手前で立ち止まって見定めることが肝要です。
特にコンパスを所持していないときは、この方法が大変有益です。

分岐点の上や山頂に立つと、眺望に見惚れるなどした後、自分がどの道から来たのかがうろ覚えになることがあります。
しかし分岐点の手前だと、自分が来た道がはっきりと分かります。背中の方向の道です。
そこで地図を取り出し見ると、自分が行くべき方向がはっきりと分かります。

なお自分が現在どこに居るかは、常に確認しておくべき事柄です。これは、常識です。
尾根や谷などの地形をよく見て、自分がどこを歩いているかを常に認識しておきます。
自分の歩くペースから、このタイムでどれだけ歩けるかを事前や現場で意識しておきます。

拡大図その3





















このピーク881の上を歩いてもかまいません。
一応の決まったルートとして、このピークを北に巻く道があるというだけです。

標識に頼り切って歩く人がよくいますが、標識を見るときは特に注意が必要です。
標識が正しいのに、その差す方角を誤ってしまう人がいます。
前にも書きましたが、方角を90度間違えることもあります。

それは人の思考にとって例えば「左」には、左斜め前、左斜め後ろを含んでいるからです。
左斜め前に行くべきところを間違えて、左斜め後ろに行けばそれは90度間違えていることになります。
だから軍隊では正確を期すために、11時の方向とか、8時の方向とか、時計の針の差す方向で方角を表します。
登山も、これを採用するべきかもしれませんね。

標識は、できれば上から見ましょう。

拡大図その4











拡大図その5



















ピーク917に登る人が右往左往しているという情報があります。
典型的な「山頂に登り眺めを楽しんだ後、道が分からなくなった」というものだと推測されます。
このピークは、どの位置(日原峠の東)にあって、どのような山(東西130メートルくらい)なのかをあらかじめ知っておくべきでしょう。

西から東に行く場合は、このピークが登山道から南に外れて位置しているという認識が必要です。
「稜線だからピークはルート上にあるに違いない」という思い込みは、いけません。
地図で見ると、ピークはそれまで来た道の延長線上、つまり真正面にあります。
しかし登山道は、このピークの手前を北に方向転換する道、つまり左斜め前「11時」の方角です(笑)。
この道は、ピーク917の巻き道ではなく、ピークからどんどん北東に離れていく道です。

日原峠の東をさらに拡大
















ここの中央を東西に行く道は、落ち葉が積もっていたりするとかなり難しい選択が必要になります。
等高線の幅がかなり広いことから、なだらかな広がりがあります。
方向を間違えると、まったく別のほうに行ってしまいます。
どこが尾根の中央かの見極めも、難しいです。

ここは、地形図に現れていない細かな地形の分析が必要です。
等高線の幅が広がっているところは小さなピークの可能性があり、狭まっているところは小コルの可能性があります。
北東に行く尾根と、南西に行く尾根を、早く見つける必要があります。

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