遭難事例の検証2 道を90度間違える

 国土地理院web地図に作図して引用https://maps.gsi.go.jp/development/ichiran.html

関東にある、1500メートル級の山の地図です。

あるベテラン登山者が西から縦走し、この蕎麦粒山を経てB方向に行こうと計画していました。

ところが実際に歩いてみると、その登山者はBでなくAを選択し下ってしまったのです。
なぜこのような90度、道を間違えるということが、起こったのでしょうか?

ヤマレコの踏み跡記録を見ると、このA方向に下っていく人はまったくいません。
少し下って登り直した人が何人かいたみたいですが。



<この登山者の当時の状況>

この登山者は自称ベテランで、この辺りには何度も登っていました。
そのせいか、当日地図もコンパスも持っていませんでした。

この人がこの山に到着したのは、午後3時ごろでした。
この山のふもとまではまだ2時間以上の行程が残っていました。登山の常識では、午後3時に下山するように計画を立てることになっています。
この当時は11月で、日没は午後4時半でした。

この人は、自分の記憶にあるこの山を、西にあるピークと勘違いしていました。
西にあるピークとは、これです。

地図の読み取りができる人なら、一目瞭然でしょう。
これは、ピーク(周囲に比べて高い所)です。

しかし、その名称を見てください。
「峠」とありますね?

ここは峠であると記憶していたなら、実際に目にしたのはピークなので
「ここは峠でなく、山である」
と思った可能性があります。
現にこの登山者は、ここを蕎麦粒山と思ったと証言しています。

<道を間違えた理由>

この登山者は、蕎麦粒山付近にある標識の矢印の方向に進んだといっています。
登山道でもない方向を矢印が向いていたというのです。

これは、この登山者の思い込みでした。
実際の矢印はBの方向を示していました。
なぜ矢印がAを向いているように見えたのかは、謎です。



(山の標識イメージ。蕎麦粒山のものではありません)







<道を正しく選ぶにはどうすればよいか>

上記のように、人の目はおかしなもので示している方向を勘違いすることがあります。
こういうミスを防ぐには、登山のさい、自分の現在場所を地図とコンパスで特定するしかありません。

特徴あるピークや、尾根の分岐ははっきりと目に見えます。
そういう場所を地図であらかじめピックアップしておいて、現地で地図とコンパスで照合する作業をするのです。
また自分が歩く速さを把握しておいて、自分がどのくらいのペースで登山しているかを予想することも必要です。

いずれにしても、事前の準備が必要です。
行きたい山ならば、事前に興味を持って調べられるはずです。
ぜひとも、地形図で行く先の山を調べる習慣をつけてください。

使う地図は、観光案内用のものでは不足です。スマホのGPS地図も不足です。
必ず国土地理院の地形図を見てください。
web上のその地形図は、拡大可能でしかも作図もでき、作図した結果を画像保存することもできます。
このブログでは、登山目的で地形図を利用する際の作図のやり方の一つを示していきます。

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