山の姿かたちを知る1(東京都)高尾山

<山の自然の姿を知る>

国土地理院の地形図で、登山ルートの状況を調べたり、迷いやすい箇所を見たりしますが、それらはあくまで人間中心で山を見ているものです。

もっと自然の形で見れないものかと思ったら、私のやり方でできると分かりました。
そう、地形図に尾根と谷の線を入れればいいのです。
登山ルートは、その自然の形の上に載せればいいだけです。

そこでまずは地形図で、その山の自然の形を観察する所から始めましょう。
今回は、東京都にある高尾山の、自然の姿かたちを調べてみます。
この地形図は、私が作画を加えたうえでここに引用しています。
https://maps.gsi.go.jp/development/ichiran.html















赤い線は尾根、青い線は谷。緑は、ピーク(山の頂上)。

<高尾山とは?>

こうしてみると、高尾山の特色は一目瞭然。
この山は、東西に連なる小山脈でした。
ちょうど1号路の中盤以降が、この高尾山脈の主軸の尾根です。

1号路というのは、高尾山口駅から西北西方向に谷をたどって登っていきます。
その谷がやがて急傾斜や滝の存在により行く手を阻んでくるので、そこで北隣りの尾根につづら折りの道で登り、その尾根を縦走する形で西に行けば、山頂に到着します。

高尾山頂の西を望む展望台の真南から支尾根が出ていて、それが高尾山脈の南側を東へ東へ伸びています。
この尾根をたどるのが、いわゆる稲荷山ルート。
小ピークがいくつかありアップダウンを繰り返す、山岳縦走のミニ版です。

琵琶滝ルートなど谷を歩くルートは、この主尾根と支尾根の間を巡るコースになっています。
その他のルートも、この2つの尾根と関わりを持っています。

<1号路の姿かたちを見る>

















1号路は、高尾山の基本ルートです。
ケーブルの清滝駅の北側が、スタート地点です。
では、この1号路が通っている場所の地形を検証しましょう。

拡大図その1














この清滝駅の北側を、西に登って行く道です。
ここは、谷になっていて、水が流れている沢に沿っています。

山の地形には、尾根と谷があります。
尾根はふもと近くでは崖になっていることが多く、登山をするには不向きなことが多いです。
尾根をふもとから利用するには、つづら折りで徐々に標高を上げていく道が付けられていることが多いです。

それに比べ、谷はふもとの近くではなだらかな徐々に高度を上げていく形になっていて、登山のスタート地点として最適です。

拡大図その2















この谷を最後まで利用できれば楽なのですが、そうはいきません。
谷は、高度を増すごとに傾斜が急になっていきます。そしてやがて人が容易に越えられない障害物が現れます。滝、です。
この谷には、ダムが作られています。
沢登りに慣れた人なら、滝やダムを側面から巻いて登ることができます。

しかしここは、薬王院への参拝道でもある一般道です。
より安全な道を模索することになります。

登山ルートの基本として、まず谷を登り、谷が滝などで詰まってしまった場合は隣りの尾根に登り尾根の上を進むというものがあります。
1号路も、その登山の基本にのっとり、ここで北隣りにある尾根に登る道を採ります。
ただ谷底から尾根に登るには、かなりの急傾斜になります。
これを克服する方法は、先ほど書いたとおりつづら折りで徐々に高度を上げていくものになります。

地図にも、ジグザグに進む道が見えるでしょう。
徐々にといっても、かなりの急坂になっています。この急坂を回避する方法として、リフトやケーブルがこの高尾山には存在しています。

拡大図その3














尾根の上に上がりました。
ここからは尾根の上を進んでいくかと思いきや、地図に私が書き加えた赤いマーカーの、A~Bの道を見てください。
尾根線は、赤い色で私が記しています。

この道が、尾根線を通らずに、南に避けているのが見えると思います。
Bでいったん尾根線と合流しているのに、その後、また尾根線から離れて行っています。
尾根の上を歩くと便利なのに、なぜ避けていると思いますか?

尾根は、山の突起部分です。
優しく丸く突起していることもありますが、多くは鋭く突起し、そのため尾根の上が狭いこともしばしばです。痩せ尾根とも呼ばれます。
人が歩くにはあまり適していません。あえて挑戦するというスタイルの登山もありますが。

だから、尾根の上をなるべく回避する道を採るのです。
こういう道のことを、トラバース道といいます。尾根の近くの下を等高線に沿って歩くことで、危険を回避するとともに、尾根道と並行して尾根道に近い便利さを享受します。

ただトラバース道、イコール超安全かといわれると、実は違います。
この高尾山1号路は超安全に作られていますが、一般の山のトラバース道は狭くて、歩くのに注意を必要とすることが多いです。
斜面の途中に作られた道だからです。

拡大図その4














D、E、Fを通る1号路も、尾根の上を回避しています。
尾根の上に建物群があるから無意識に回避できているように見えますが、この建物群(観光施設)は道ができた後に道に沿う形で作られていると考えられます。

拡大図その5





















Gで男坂、女坂に分かれていますが、実はどちらも尾根を回避しています。
尾根がどの方向にあるかを見るには、道を歩きながら左右を眺めることです。

ビジネス目的で歩くなら前しか見えないのもしかたありません(道迷いの危険があります)が、観光目的で歩くなら左右に視線を向けるのはむしろ自然といえます。
道のそばに低いところがあり水が流れていたら、その流れる音や涼しさを体感できるでしょう。
同じく、道のそばに高いところがあれば、登山道を歩いているのだという感覚が味わえるでしょう。

拡大図その6














H~Iの道は、薬王院の境内を進む道です。
薬王院自体が尾根から外れた場所にあるので、尾根を回避できます。
Iで尾根と合流します。

I~Jは、尾根線と完全に一致しています。
尾根線は瘦せた狭いものですが、舗装路がしっかりと整備されていて、とても安全に歩けます。

この写真は、商用利用可能な著作権フリーの写真acより引用しています。





(高尾山のふもとのケーブルカー清滝駅)


コメント

このブログの人気の投稿

東京都の山々 日の出町・青梅市 日の出山

東京都の山々 鍋割山 1084メートル

東京都の山々 青梅市・奥多摩町 御岳山