遭難事例の検証6 起伏がないのも考えもの(神奈川県の世附権現山)

 この山です。













国土地理院のweb地形図に私が作図を加えたものを、引用しました。
https://maps.gsi.go.jp/development/ichiran.html

丹沢湖の北岸にある、いわゆる低山です。
こんなマイナーな山には誰も登らないのではと思ったら、意外と登る人がいるようです。
動画や写真の情報によると、山頂付近は樹木がまばらに生えていて、見通しはまあまあ良く富士山も見えるという眺望です。

ただ。

この山は、道迷い多発地帯といわれています。
いったいどこにそのような要素があるのでしょうか。地形図から、その道迷いの原因を探りたいと思います。

<山頂の状況>

私は、ある山を調べるときは、まず山頂を特定する作業をします。
このように山頂の等高線の閉じたところを緑色の太い線で表します。
こうすることにより、山の特色が際立ってきます。


権現山の山頂は、平坦部分が広いです。
その周囲も、同様です。
もちろん平坦なように見えて、地図に現れない起伏はあると思います。
これを見ると、西に少し高いピーク、東に少し低いピークがあり、その間がコルになっています。
最上部の等高線と2番目の等高線の間が狭いことから、山頂に上がるところは急傾斜で、周囲より際立った突起状態になっています。

<尾根はどうなっているか>



















では、次に尾根を赤い色で作画します。
これが、その作画の結果です。
山頂以外の緑色は、特徴のあるピークです。ミツバ岳とか菩薩山などの名前が付けられています。
斜めに走っている赤い線は、磁北線です。コンパスの基準線です。

さて、この地図から分かることは。
権現山の尾根は、ぶつ切りになっているところが多いです。明瞭な尾根が連続していないということを示しています。
これは、登山にとって重大な意味を持ちます。

尾根は登山道に使われることが多く、特にこの山のように一般登山道が存在しないバリエーションルートだけの山でその威力を発揮します。
ところがその肝心の尾根が不明瞭な部分が多いとなると、これは相当厄介な登山下山となります。
登りは、尾根の中央を適当に(笑)登っていればたどりつけますが、下りは降り口を見つける必要があります。
不明瞭な場合は、降り口が分かりません。

登山道を見つける際に、よく「踏み跡を」とか「テープやリボン」とかいいますが、どちらも当てにできません。
登山アプリに踏み跡が記録されていても、それは登山者がどういう気持ちでそこを歩いたのか不明です。「ここを下山するのだ」ならいいのですが、「下山路はどこだろう?ここかな?」と手探りで歩いたのなら要注意です。ひょっとすると崖をおしりをつけて滑ったのかもしれないし、飛び降りたのかもしれません。
リアルの踏み跡も、迷って行ったり来たりを繰り返した結果かもしれません。

テープやリボンは、登山者が付けたとは限りません。
山の所有者や、林業関係者や、送電線点検の電力会社や、山菜取りの人や・・・

地図とコンパスも、現在位置が分かっていれば使えますが、分からないと使いようがありません。(遠くに見える山々や湖は、いちおうの目標にはなります)

この権現山の登山が非常に難度が高いというのが、この地形図に現れています。

<開発されている尾根は>














いちおう人が通ったことのあるという情報(私が入手した)のある尾根に、〇を付けています。
それはあくまで通ったことがあるというもので、前述したとおりここが登山道だと思って歩いたのか、迷って歩いたのかは定かでありません。
危険を伴う恐れがあるので、十分な注意が必要です。

<地図を拡大しておきます>

山頂の北東・南西










山頂の南西・南










山の南西端・南端










山頂の北東















山の東・南東














山の南東端














尾根は、山のふもとのほうになると崖になることが多いです。
そこでふもとが近づいてきたら、尾根をつづら折りにジグザグに降りたり、谷の方向に降りることがよく使われます。
そういう道を探すのが良いでしょう。
そこで地図にも、ふもと近くの主な谷を青い線で記しています。

以上、世附権現山でした。
最後に、山頂付近をさらに拡大した図を載せておきます。















下山口は、北へ行く道以外は不明瞭です。
決めつけないで、選択肢を複数持つようにしてください。







(山頂に近い所から谷に降りると、このような滝にぶつかることが多いです。
 谷に降りるタイミングは、ふもとになるべく近い地点にしましょう)

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