遭難事例の検証4 事前の下調べを怠る(伊豆天城峠から八丁池へ)


国土地理院のweb地図に作画したものを引用し、検証していきます。
https://maps.gsi.go.jp/development/ichiran.html











もうすでに作図しています。
ハイキングコースとして設定されているルートが見えづらいですが、左下の天城峠から向峠のA、Bを経て、Cではなく、D、Eを経て大見分岐に達し、八丁池に向かうルートです。

これが見えづらいというのは、実は自然の地形がそうさせています。
この付近は、身近な低山地域であることからハイカーが非常に多く、そして道迷いや地理不案内による救援要請が少なくない場所でもあります。

地図を検証したところ、その道迷いの原因がはっきりとわかりました。

地図内のピンク色で示した道が、道迷いをしている人の踏み跡です。
とくにA・B・Cの並び、これは尾根です。
道迷いしている人に共通することは、「登った」という行動です。

これは、事前に地図でコースを下調べすれば完璧に防げる、認識の誤りが原因です。
このコースには、登りがほとんどありません。登る箇所はありますが、すぐに降りるべきなのです。
つまりこのコースは、平坦な登りのない道をひたすら歩くコースです。

しかし事前に下調べを全くしない状態で当日行けば、この迷いが起こる可能性が高まります。
とくに登るという行動に苦痛を感じない人、健脚なひと、足の運びが早いひとが、道迷いを起こしやすいです。

このコースは、標識が整備されています。
ただその標識のほとんどは、自然の風景に溶け込むいわゆる保護色であり、見えづらいのです。事前準備無しで談笑しながら歩くと、標識を見落としやすいでしょう。





















向峠からのようすを拡大しました。
黒い破線が、ハイキングルートです。
赤い線が尾根線で、ピンク色が迷った人の踏み跡です。(参考、登山アプリヤマレコ)

<Aから登る誤り>
Aの向峠から953メートルのピークに登る人が、少なくありません。
もちろん意図して登ったのなら、いいのです。その場合はBで本来のコースに戻ればいいだけですから。

しかし目的地が八丁池経由の天城山登山で、距離が長いことからできるだけピークに登らないルートを選択する必要があるときに、事前の下調べなしにここを意図せず登ると道迷いを起こす危険が生じます。
「あ、このコースは登り主体なんだな」という誤った認識が起こり、そのままCの山頂まで行ってしまいます。そうなると、完全にコースから外れています。

この地図には、誤ってCに行った人が脱出するルートも描いています。
東に降りる踏み跡、北に降りる踏み跡の2つで、北に降りた後に西に行き本来のルートに戻った踏み跡も、あります。

<D付近から登る誤り>
また本来のルートを歩いているのに、途中で誤って登ってしまう人も少なくありません。

Dは、狭い谷との出合い地点です。
ここを渡渉し、目の前の山を左に迂回するコースが本来の道です。
ところがなぜか、この谷を右に登ってしまう人が少なくないのです。
(少し行くと斜度が大きくなり、登れなくなり引き返す人が多い)
もちろん事前の下調べをしていないことが明白なのですが。

Dの少し手前に、山に登る階段道が有ります。
ここを登り、ヘアピンターンですぐに降りるのが、本来のコースです。
ところがなぜか、そのまま登ってしまう人も、少なくありません。
ここは、地図には赤い点線で示しています。不明瞭ですが、尾根です。
これも、事前の下調べを全くやっていないこと、当日地図を見ていないことが、明白です。

この2か所の道の選択の誤りの共通点は、そのまま一直線に登ってしまう行動にあります。
この「まっすぐ一直線に歩く」という行動は、実は人の本来の習性です。
だからこの道迷いは、責められることではありません。本能に従った結果ですから。

登る行動を継続したというのは、コースへの認識の誤りです。
本当にこの道に愛着を覚えこの道の自然を真に理解しているのか、疑わしいですね。










<もちろん、登山・ハイキングの目的は、人それぞれ>

厳しいことを書きましたが、登山やハイキングの目的は人それぞれで、事前の下調べをしないこと、談笑に夢中で標識を見ないことも、その人それぞれの中に含まれている、個性の表れだと考えます。
だからその結果、警察に救援要請をし他人に迷惑をかけかかった費用を支払う(公的な救援は無料)ことになっても、自業自得なのでしかたないと思います。

ちなみに、私の趣味志向は、地形図で登山ルートの細かい状況を調べさらにその山やその周辺の地形も細かく調べること、それ自体が楽しみになっています。
その調べた結果を、当日に見る風景と照合する作業自体も、楽しみにしています。
コースの方向をコンパスで定め確認する作業それ自体が、とても楽しいのです。
私にとっては山に登ることはあまり重要ではなく、その山の起伏の細かい状況を知ることそれ自体が最大の楽しみになっているという、超マニアックな状態になっています。

なお私は市街地でも初めて行く場所があるときは、事前に下調べし電車がどんな地形を通過するかとか目的地の地形状況(池を埋め立てた形跡があるとか)を調べます。
地形起伏マニアですね(笑)







(ハイキングの楽しみの一つ、眺望)


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