遭難事例の検証1 分岐点の誤った選択の危険
奈良県で起きた事例を参考にします。
国土地理院地図に作図して引用https://maps.gsi.go.jp/development/ichiran.html
南から北にまっすぐ進む予定です。
分岐点に来ました。さて、ABCどれを選びますか?
当然Bを選びますよね?Bが正解です。
AもCも左、右に直角に曲がるルートです。選ぶことなどありえないでしょう。
しかし。
現実の事例では、登山者はAを選択し、結果として遭難(自分がどこにいるのかわからなくなった)しました。なぜAを選択したと思いますか?
<当時の状況>
このとき、現地のこの分岐点(赤いマーカーの地点)には標識が立っていました。
その標識はAの方向に矢印を示し、B・Cの方向には何も表記していませんでした。
ただAの方向に示した矢印の下に、その方向にある地名が記されていました。
そして登山者は、このとき地図もコンパスも持っていませんでした。
ただ今まで数回通ったことのある道ということでした。
この登山者は、なぜ誤ったAを選んだと思いますか?
その登山者が過去にここを通ったときには、この標識はありませんでした。この標識は、その過去の通ったその後に設置されたものだったのです。
この選択の誤りは、人が示された矢印の方向に行く習性があるということを物語っています。
怖ろしいですね。
<誤りを防げたか?>
そして登山者がこの時点で地図やコンパスを手に持ち、歩きながら自分の現在位置を逐一確認していれば、この選択の誤りは起こらなかったと思います。
「地図やコンパスでいちいち確認は面倒くさい」と思っていませんか?
実は、地図やコンパスで位置や方向を確認する作業は、慣れれば十秒余りでできます。
面倒くさいと思っている人は、ふだん地図とコンパスを使っていない人です。
今はスマホのGPSがあるから便利と思っていませんか?
あれは、方向や位置が少しですがズレます。つまり正確ではありません。
歩く経路を10度ズレただけでまったく違う方向に行ってしまうのです。
またスマホの電池はあっという間に減ります。
<地形図予習のすすめ>
あらかじめこの地形図で予習しておけば、100%防げました。
このマーカー地点は、3方向に尾根が分岐しています。迷いやすいポイントです。
私は、このような場所を迷いポイントと呼んでいます。
この地図でのB方向には尾根がありません。これも迷いを引き起こしています。
現地のB方向は林(その中に道があるが南方向からは見えない)で、A方向には道が明確にあります。
感覚や過去の記憶で選ぶと、標識が無くてもAに行ってしまうということです。
<地形図遊びのやり方>
私の上記地形図への作画書き込みをご覧ください。
地図を見てルート上の尾根が分岐している地点に赤いマーカーを付けます。
尾根は、赤い線で書いています。青い線は、谷です。
こうすると、あらかじめ迷いやすい地点が分かります。
あとは現地で地図とコンパスで自分の現在位置を確定し、このマーカー地点の通過に備えるのです。
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